漫画規制の署名を集めたのは日本会議系の宗教右翼/有害コミック問題(1990年)

和歌山県の中学校 コミック規制運動 PTA委員に署名集め依頼 官民一体「性描写は有害」
朝日新聞(1991年5月29日)

少年少女の性を取り上げたコミックについて、父母から「行き過ぎがある」と批判が強まり、各出版社はコミックの回収など自主規制に乗り出している。きっかけの一つとなったのは、和歌山県田辺市を中心とした主婦グループ「コミック本から子供を守る会」の運動だった。市教委や学校も巻き込み、官民一体となる熱心さだった。
 
市立東陽中学を訪ねた。
 
問題となったコミックの単行本「Angel」「いけない!ルナ先生」などはすでに市内の店頭から消えたが、子供達には不満がくすぶっていた。
 

中学二年生の女子
性については関心がやはりあるので、「レモンエンジェル」を小学校5年生ごろから読んでいた。余計なことをしてくれた、という感じ。作り話のマンガとして読んでいるのに。

同級生の男子
親に内緒で読んでいたけれど、大した中身じゃなかった。熱心に読んでいたわけではなかったので、規制に賛成でも反対でもない。

 
同校では、各学年に10人前後いるPTA委員に生徒を通じて「性描写マンガの追放」などを求める署名用紙を渡し、地域で依頼した結果、生徒数とほぼ同数の署名が集まった。他の小、中学校でも同様の署名活動が行なわれた。
 

東陽中の岡本操二校長
教職員の間では「署名までする必要がない」「社会浄化を進めるべきだ」と両方の受け止め方があったようだ。私は性教育の観点から好ましくないと判断した。

 
発端の一つは昨年八月、地元の新聞に掲載された中年男性の投書だった。「ドギツイ描写で露骨に性を表現している出版物の行き過ぎを規制するよう行政当局の対策を強く促したい」。前後して市教育長に同主旨の手紙が届き、市長も直接訴えを聞いた。
 
市長は市教育委に「有害コミック」追放の取り組みを指示。他方、投稿者の妻(30)ら主婦が中心になり法的規制を求めて「コミック本から子供を守る会」を結成、教師と生徒が校内でセックスするような性表現を問題視し署名運動を始めた。市や連合PTA、校長会など県も九月以降、青少年健全育成条令に基づき次々と有害図書に指定。県議会も十月、追放対策強化と法の制定化を政府に求める意見書を、全国に先駆け提出した。
 
意見は大阪、福岡など十八都道府県にのぼり、出版社は指定を受けたコミックを入荷停止し、四月には出版倫理協議会にコミック特別委員会が発足した和歌山県が五月十日に県内の書店約三百十店を立ち入り検査した結果、「性的刺激を与える」青少年向けコミックを販売していたのは三七%。昨年十一月に比べほぼ半減した。
 
予想以上の結果をもたらした運動だったが、ある県議から「「子供を守る会」の運動の中心は、ある宗教団体の信者だった」と聞いた。
 
その仏教新興宗教(本部・大阪、信者・公称八十万人)は、昨年六月から八月にかけ、機関誌で性描写のある青少年向けコミックを批判する特集を六回掲載。そこでは道徳教育や愛国心の重要性を強調、「言論・表現の自由の美名のもと、すべての日本人を「性の奴隷」に仕上げようとする危険極まりない“亡国”の途をたどりつつある」と指摘した。
 

この宗教団体の広報担当者
和歌山、大阪、兵庫、福岡などで信者が自主的に活動したと聞いている。機関誌が火をつけたのは事実と思う。

信者でもある田辺市の「子供を守る会」の役員
機関誌を読んで始めたわけではないが、読んで取り組みに熱がこもり、他の信者に署名の協力を求め声をかけた。

 
そうした背景を知らずに署名した人は多い。
 

田辺市のある主婦(63)
教団の思想にはかなり隔たりを感じる。そうしたことを知っていれば署名しなかった。市も結果的に特定の宗派の運動に利用されたのではないか。

西川徹・田辺市教育長
そうしたことは初耳だが、主体的に判断して追放運動に取り組んだだけで、特定の宗派に利用されたとは思わない。

県青少年問題協議会常任委員の山本健慈・和歌山大学助教授(社会教育)
宗教団体の背景は知らなかったが、あれよあれよという間に運動が広がったという感じはしていた。子供たちへのマンガの悪影響が指摘されると、法的な規制を求める運動が起こるが、性描写の過激なコミックがなくなっても、それに代わるものが次々と生まれる。本当に必要なのは、表現の自由を守りながら倫理的な基準について市民と出版社が議論して合意を得ることだ。

 
宗教団体の名は念法真教日本会議に参加している宗教右翼です。*1
 

 
昔から漫画規制運動で署名を集めるのは宗教右翼極左キリスト教団体というのがお約束。
 

*1:有害コミック問題当時はまだ日本会議は発足していない