朝日新聞社説「貧しい漫画が多すぎる」(1990年9月4日)
90年の大弾圧で表現規制にお墨付きを与えたのが朝日新聞の「貧しい漫画が多すぎる」社説だったことは、ことあるごとに何度でも繰り返して言ってきましたし、今後も言い続けます。朝日新聞は未だに訂正も謝罪もしていません。
— 永山薫@マンガ論争 (@Kaworu911) July 18, 2016
漫画における表現規制問題の生き字引である評論家が批判している社説が、これ。
社説:貧しい漫画が多すぎる
(朝日新聞、1990年9月4日)
http://www.hmt.u-toyama.ac.jp/socio/lab/sotsuron/97/kato/8-poorcomic.html
東京都の生活文化局が、市販されている332種の週刊誌や月刊誌について、そのセックス描写を調べてみた。硬派の雑誌も含めた調査だが、それでも、あきれるような数字が並んでいる。
「漫画の50%は性的描写を含み、8%は自慰行為を描いていた
「グラビア写真に登場する女性のうち、41%が性的器官を強調されていた」
4コマ漫画を除く、いわゆるストーリー漫画を約1200作品、約13万コマを丹念に調べた結果だ。グラビア写真の人物は約7000点検しており、この種の調査としては、前例のない規模だろう。外国からやってきた人は、電車に乗ってみて、露骨な漫画や写真の載った印刷物を広げる日本人の多さにびっくりする。ポルノが解禁されている欧米でさえ、場所も時間も構わずに、これほど堂々と「性」がはんらんしている地域は珍しいだろう。
都民へのアンケートでも、青少年への影響を憂える声が大きかった。こうした漫画や写真を幼い時から見せられて育つと、どんな人間になるのだろうか。文化の将来を考えて、そら恐ろしい気持ちにもなる。
とくに強調したいのは、こうした現象を女性の立場で考えてみる、ということだ。今回の調査を分析した執筆陣は、性の商品化、とくに女性を「モノ」として見る風潮を厳しく批判していた。
都民に「女性の身体の一部を強調した表現をどう感じるか」と聞いてみた。女性の55%は「不快だ」「女性蔑視」と答えており、「きれい」との反応は17%だけだった。男性の、それぞれ18%と39%に比べると、感じ方の違いが分かる。
集められた漫画の多くが、男性中心の物語だった。暴力による性行為でも女性は快感を感じるとか、つねに奉仕するポーズを女性にとらせるとか、男の好色に都合良く描かれている作品が少なくない。
男性の編集者や漫画家は「物語の流れから必然の描写だ」「女性蔑視どころか、美しく描いている」などと反論する。しかし、「性交の場面がキス場面の2倍以上もある」といった調査結果を読むと、商売優先、そして発想の貧困、と思わざるをえない。
この夏、「鉄腕アトム」の手塚治虫さんをしのぶ展覧会が、東京国立近代美術館で開かれた。ユーモアと人間性、そして文明の将来を憂える哲学など、改めて学ぶことは多かった。その理想と想像力を後輩作家がもう少し受け継いでいたならば、「漫画亡国」の批判も起こらなかったろうに。
昨年、大胆な水着ポスターなどに抗議した女性グループがあった。不自然な図柄は劣情を刺激し、女性の人格を無視している、という主張だ。非を認め、前向きの努力をした企業も少なくない。エッチな出版物についても、女性の側から「不快です」の声が続けば、内容は変わっていくかもしれない。
もちろん、低劣であることを理由に、法律や条例で規制するべきではない。問題の多い雑誌などがあっても、話し合いと、出版側の自制で解決していくべきだ。
その代わり、マスコミに携わるすべての人々は、1975年に国際婦人年世界会議で採択された「メキシコ宣言」を思い起こしてもらいたい。こんな趣旨の一説である。
「すべての報道、情報、文化メディアは、今日なお女性の発展を妨げている文化上の要因の除去につとめ、女性が果たしていく価値を肯定的に社会に投影させることについて、高い優先度を与えるべきである」
死人に口無し。
1955年『鉄腕アトム』は小学校の校庭で見せしめ的に焚書された http://t.co/EhWweJlMtR
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) February 9, 2014
鉄腕アトムの未来描写(高速道路やロボット等)を荒唐無稽と批判、手塚治虫を「デタラメを描く子供達の敵」と吊し上げ。規制派が子供をダシにするのは今も昔も同じ。
まさかの手塚親族さんからの逆ネジw そりゃ、そう簡単に割り切れる訳ないわな。偉大な邦画の映画監督だって、若い頃はポルノ映画で腕を磨いてたりするのだ。
— 日下春生(zsphere) (@faketaoist) July 16, 2013
表現規制に邁進する片山さつき、手塚治虫の娘にツッコまれる - NAVER まとめ http://t.co/h6Zd01Tsc2
「良識ある市民の皆様」が、取次先である貸本屋に大挙して押し寄せてきたシーンは記憶に新しい。手塚治虫先生の作品も、かつては多くが「俗悪」として槍玉に上がった「ジャングル大帝」や「ブラックジャック」時には「鉄腕アトム」でさえ。
— SOW@「戦うパン屋」五巻発売中!! (@sow_LIBRA11) July 18, 2016
悪書追放運動として、「子どもたちのために」というお題目で、学校の校庭に子供から取り上げたマンガを山積みにし、子供の前でガソリンかけて燃やしたのだ。戦後日本で、秦朝ばりの焚書が行なわれたのだ。 pic.twitter.com/p9OspLwHqQ
— SOW@「戦うパン屋」五巻発売中!! (@sow_LIBRA11) July 18, 2016
『性の商品化に関する研究』と当時の朝日新聞の報道・社説について https://t.co/U9qjiG78j8
— MUNEGASHI Isako (@isako134) July 18, 2016
『貧しい漫画が多すぎる』社説、およびその根拠とした東京都の研究調査とその報告書を取り上げた朝日新聞の記事や、4コマ漫画が調査対象外だった理由についてまとめてあります。
同社説は、大阪を拠点とする日本会議系*1の宗教右翼による「有害コミック撲滅運動」を全国に拡大させる端緒となったといわれています。
*2
「コミック本から子供を守る会の運動の中心は宗教団体の信者だった」と和歌山県議。運動に賛成した主婦曰く「教団の思想を知っていれば署名しなかった」。
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) November 19, 2015
▼「性描写は有害」コミック規制運動、PTA委員に署名依頼(朝日新聞、1991年)https://t.co/Mb7qgSj51m
「コミック本から子どもを守る会」の代表は、5年前に“非実在青少年”規制を肯定的に取り上げた朝日新聞関西版(批判を浴びた為に関東版には未掲載)にも登場した。ただし記事の中で同会と代表の宗教的背景は一切説明されていない。https://t.co/pvXhocom1A
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) November 19, 2015
ところで、全国紙の社説を担当している論説委員も、漫画を「事後検閲」する東京都青少年健全育成審議会の委員を務めている事はご存知でしょうか。
「不健全」図書として指定できるのは、性表現だけではない。東京都の場合、暴力や犯罪、さらには自殺に関する表現を規制することもできる。規制対象に「犯罪」と「自殺」が追加されたのは2001年3月だが、当時、朝日新聞の津山昭英・東京本社編集局記事審査部長は東京都青少年健全育成審議会の委員であった。新聞社の人間が指定の適否を判断する東京都青少年健全育成審議会に委員として参加していることに問題はないのだろうか。また、こうした事実がまったく報道されないのはなぜだろうか?
帯紙措置は東京都青少年健全育成審議会による指定(個別指定)と連動している*3。2004年3月の条例改定では、包括指定の導入に代え、この個別指定が強化されている。この個別指定の強化については、毎日新聞社の瀬戸純一論説委員が、2003年11月17日開催の第524回東京都青少年健全育成審議会で、「1ヵ所でも、あるいはちょっとでも、それこそ犯罪的なものがあれば、それは短くてもだめ」と指摘し、分量基準を満たさなければ指定されない包括指定を導入するより、分量に係りなく指定できる個別指定を強化すべきだと主張していた。
「有害」規制監視隊 青少年条例をめぐる動き
http://hp1.cyberstation.ne.jp/straycat/watch/data/jyourei/2004-2.htm
第26期(26.10.1~28.9.30) 東京都青少年健全育成審議会委員名簿
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/seisyounen/pdf/09_singi/26ki_meibo.pdf
未だにBLは不健全または有害指定されないって言説が一部に残っててズッコケました。昨年の東京都の実績を見ると指定された女性ジャンル(BL、TL、レディース)と男性ジャンル(ライトエロ、劇画)は、ほぼ同数です。
— 永山薫@マンガ論争 (@Kaworu911) January 8, 2016
イチャモンをつけて懐が暖まるのですから、お気楽な御身分だと思うのですが、民草には分からない苦悩もあるようですよ。
「あの審議会の委員はあんなものを見て報酬をもらってとんでもないなんて言われやしないかと思うと、私、委員をやめようかと思うぐらいですよ」
(東京都青少年健全育成審議会委員の発言、2000年12月14日)
「ではどうぞ辞めてください。それだけのことだ」
(長岡義幸氏/ジャーナリスト、「ず・ぼん第7号/学校と図書館・非常勤の未来」から)
http://www.pot.co.jp/books/isbn978-4-939015-35-9.html
参考までに。
読売新聞といえば、非実在青少年規制問題の社説が酷かったですね。
社説:都青少年条例 露骨な性描写の規制は当然だ
(読売新聞、2010年12月15日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101214-OYT1T01203.htm
青少年の健全育成の観点に立てば、規制強化は当然だろう。
当初の改正案は、18歳未満の少年少女の性行為を肯定的に描いたものなどを新たな規制対象として加えるというものだった。しかし、民主党などが「対象があいまい」との理由で反対し、6月の議会で否決された。都が手直しした上で議会に再提出した今回の改正案は、強姦(ごうかん)など法に触れる性行為を「著しく不当に賛美し又(また)は誇張する」作品は成人指定できるとしている。このため民主党は賛成に転じた。
条例案には「慎重な運用」を求める付帯決議が加えられた。条文を拡大解釈して乱用するようなことはあってはなるまい。都の成人図書の指定は、PTAの代表や出版・報道関係者、都議らで構成する審議会で行われている。今後、審議会にかかる作品の幅が広がり、新たな判断を迫られるケースも出てくるだろう。より多様な意見を議論に反映させるため、漫画家を委員に加えることなども検討してはどうか。
青少年に対する漫画の販売規制は自治体によって基準が異なり、東京都の議論だけで問題が解決するわけではない。どんなに出版物の販売が規制されても、ネット上には過激な性描写の画像が氾濫している。家庭や地域、各業界ぐるみで子どもを守るための取り組みを進めて行くことが肝要だ。
【宮崎勤事件】読売新聞記者による"真相"告白 - 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題まとめ (id:mxixtxbx / @MxIxTxBx) http://t.co/nnpkexuAOj この捏造のせいで 生き地獄 を味わった人間がどれくらいいることか・・・
— 風見一姫 (@kisakinomiyatih) March 1, 2015
あの社説の直後に、それを批判する高橋源一郎さんの文芸批評が直後に掲載されたり、社説批判が入っている『エロマンガ・スタディーズ』を小川びぃさんがコラムで採り上げてくれたりと朝日新聞が一枚岩じゃなく、懐も深いことは承知していますが、なかったことにはできません。
— 永山薫@マンガ論争 (@Kaworu911) July 19, 2016
小川びぃさんのコラムです。勝手な想像ですが、この原稿が通ったのは朝日文化部の中の人に内心忸怩たる思いがあるのではと思っています。もちろん小川さんもよく書いてくれたなという感動がありました。 https://t.co/rPK4wzD3HO
— 永山薫@マンガ論争 (@Kaworu911) July 19, 2016
高橋さんは、『「貧しい」のは漫画だけではない。文化は「クズ」の集積そのものなのである』と社説を切って捨てました。朝日文化部の反撃だったのかもしれません。『文学じゃないかもしれない症候群』に収録されています。 https://t.co/i8FnW00oPz
— 永山薫@マンガ論争 (@Kaworu911) July 19, 2016
「1991年の有害コミック騒動の頃、高橋源一郎さんが『表現の自由というのはクズである自由だ』と書いたのが凄く印象に残ってます。浮世絵も昔はクズ扱いで、輸出品の梱包に使われた結果、海外で価値を認められた」(山本直樹氏/漫画家)https://t.co/hiNdp0hwRu
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) December 27, 2015
承前「昔も今も大騒ぎするのは10人~20人だと思うんですが、彼らの声が増幅され、聞こえ易くなった。敏感に反応するからクレームを付けるのが楽しいんでしょう。でも、一々対応する必要があるのか。多少叩かれても平然としていられるふてぶてしさが社会全体で失われている」(山本直樹氏/漫画家)
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) December 27, 2015
選挙結果についての更新は後日。
▼表現規制反対派の候補https://t.co/PL3EA02RM1
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) July 9, 2016
▼表現規制を推進した候補https://t.co/799PlMcwnV
漫画や映画などの表現規制問題を投票の判断基準にするのは別におかしな事ではありません。ぜひ参考にして下さい。
(都外在住者を無視した)喧嘩祭の彼是についてはツイートしません。火達磨になるのが目に見えています。御免蒙る、非都民なのに*4。
都知事候補が表現規制反対と言うなら、1青少年課を生活文化局に移管、2青少年・治安対策本部を廃止、3警察との併任、警察からの出向を行政職から排除、4青少年条例に異議申立の手続きを明記、5健全育成育成審議会の全ての会議の例外なき全面公開――などを約束できるかで本気度がわかるだろう。
— 長岡義幸 (@dokuritukisya) July 17, 2016
正鵠を射たこのコメントは、永山薫氏と同じく漫画の表現規制問題を長年取材している長岡義幸氏(ジャーナリスト)によるもの。規制推進に拘泥している警察官僚らが巣食う青少年・治安対策本部という癌を治療しないかぎり、一連の事態が改善する事はあり得ません。
「悪名高き漫画やアニメの表現規制は東京都の青少年・治安対策本部が中心になっている。警察官僚が率いる同本部は青少年を支援・更生させるよりも、どんどん取り締まる方針になった」(青木理氏/ジャーナリスト)
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) May 12, 2014
<都政と警察の不都合な関係>http://t.co/nB6ba99koM
「従来、都庁では生活文化局が福祉的視点で青少年対策を行なっていた。しかし警察官僚が率いる青少年治安対策本部のやり方は全く違う。支援より取締。悪名高き漫画やアニメの表現規制も同本部が中心となっている」(青木理氏/ジャーナリスト)http://t.co/tPa2oZ0a1s
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) February 20, 2014
▼「漫画規制条例」の裏に蠢く警察利権(青木理氏/ジャーナリスト)https://t.co/9aQVjuyjruhttps://t.co/Be6Pk6lNy4
— 漫画・アニメ・ゲーム・映画の表現規制問題 (@MxIxTxBx) July 17, 2016
「そもそも青少年の健全育成と治安対策を同列に扱い、それを警察出身者が牛耳る態勢は異様」(匿名を条件に発言した都幹部)
以下、長岡氏と永山氏の著作。必読。
マンガはなぜ規制されるのか - 「有害」をめぐる半世紀の攻防 (平凡社新書)
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発禁処分―「わいせつコミック」裁判・高裁篇 (「わいせつコミック」裁判 (高裁篇))
- 作者: 長岡義幸
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東京都青少年健全育成審議会の場合「有害」「不健全」図書は誰が、どうやって決めているのか
(長岡義幸氏、2001年8月6日)
http://www.pot.co.jp/zu-bon/zu-07/zu-07_154
東京都条例は他の自治体の条例とは大きく違って、業界の「自主規制」と連動しているのが特徴になっている。三回連続指定を受けると、出版四団体(日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会)で構成する出版倫理協議会(出倫協)が制定した申し合わせによって「一八歳未満の方々にはお売りできません」という帯紙を付けて販売しなければならず、書店に対しては定期改正(仕入部数の変更)を求めることになっている。必然的に流通部数が減ってしまうために、休刊(実質的な廃刊)を余儀なくされてしまうのが通例だ。
比較的緩やかとされている都条例ではあるけれど、業界の「制裁措置」を担保にしているという意味で他の条例よりも厳しい運用がなされているといっていい。宝島社はこのような業界自身による「自主規制」措置と条例規制の連動にも異議を唱えたわけだ。
審議会委員は「ある意味においては無力なこの委員会に対する挑戦でもあるのではないかと思えます」「宝島社はもっとこらしめてやらないとと思います。これはとんでもない出版社ですね」とてらいもなく悪罵を投げつけるのは、何度指定してもひるまない宝島社に対する反発であろう。しかも彼らは東京都が「不健全」指定してもいいかどうかを審議するのが役目であるはずなのに、本音は「出版社をこらしめて」やるために指定を行っていたことも明らかにした。ただの行政手続きではなく、業界の自主規制と連動した恣意的な懲罰のために「不健全」指定制度が存在していることを自ら暴露したようなものだ。
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