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「東亜の盟主たるには淫蕩気分を一掃することが急務」(日本キリスト教婦人矯風会)

戦前の表現規制が、初めは「エロ・グロ」の取り締まりから始まって、そのうちに新聞記事とか、写真や放送の規制にまで広がっていったことを、つい昨日のように思い出します(ちばてつや氏)。

 
児童ポルノ禁止法改悪案と都条例改悪案のたたき台作成に関与したECPATストップ子ども買春の会の母体組織である「日本キリスト教婦人矯風会」は、戦前のポルノ取締りでも例のなくそう!子どもポルノキャンペーンECPAT側の説明によると"子どもポルノ"の定義には漫画やアニメなども含まれる)と同じような政治運動を展開。治安維持法や出版法などに基づいて検閲を行っていた内務省*1に検閲強化の要請を行いました。
 

マンガ包囲網 政官業民一体で推進される表現規制の多重構造/高村武義
青林工藝舎「アックス」、2011年6月30日)
http://d.hatena.ne.jp/taka_take/20120803/1344005520

矯風会は今から約125年前に設立された日本で最も古い婦人団体で、戦前より禁煙・禁酒運動、婦人参政運動、そして中でも廃娼運動や、ポルノや婚前交渉を否定する純潔教育に力を入れてきた。また彼らは自分達の主義主張を政策として具現化させる為に、行政に積極的な働きかけを行ってきた。例えば1928年に内務省に、婦人雑誌に掲載された性愛記事の取締りと検閲の強化の請願を提出し、また1947年には文部省に働きかけ、純潔教育委員会を設置させている。

 
また日本キリスト教婦人矯風会は太平洋戦争時には進んで戦争協力を行い、「東亜の盟主たるには淫蕩気分を一掃することが急務」という主張の下で“純潔報国運動”を展開しました。*2
 

日本キリスト教婦人矯風会百年史/倉橋克人
(ドメス出版、1986年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonnoshingaku1962/1987/26/1987_26_90/_pdf

矢嶋楫子(矯風会創設者)は、矯風会運動の展開の方法的基盤を「我が国の如くお上の威光の行はれる処にあっては、法律の力は特殊の効力を奏する事が出来る」(婦人新報第233号、1916年)との確信の上に置いたが、こうした尊皇意識が天皇制国家そのものの構造的矛盾に対し自らを無感覚にし、国民精神総動員体制下では「東亜の盟主たるには、国辱的制度を廃し淫蕩気分を一掃することが急務」として、廃娼運動の論理を純潔報国運動へと収斂転化させていったのではなかったか。

 
戦前は雑誌狩り運動、戦中は純潔報国運動、そして現在は漫画・アニメ・ゲーム規制運動。反省の色、皆無。
 

参考資料:児童ポルノ法改正案の最新版「論点整理」
保坂展人氏/世田谷区長・元衆院議員、2009年7月06日)
http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/1572f2517ac43bbc0a7706c4bb485921

戦前のエログロナンセンスに対する規制は、治安維持法などの言論規制法にたどり着いた。刑法学者の中山研一氏は、かつて「ジュリスト」に「治安立法」にかかわる論考を発表し、その中で「いわゆる機能的治安立法(典型的な治安立法の形をとらず、実質的に治安目的に機能する立法)の存在とその増大傾向に着目しなければならない」と書き、この文面について「治安の維持強化のためには、あらゆる現存の法律が有機的に利用されるのであり、問題は、運用者による利用の意志と、その利用可能性および程度にかかっている。したがって、それ自体政治的色彩を持たない法律であっても、立派に治安立法たりえるのである」と注釈していた。

*1:内務省は現在の警察庁にあたる警保局を所管していた。拷問殺人で悪名高い特別高等警察もここに設置された。

*2:日本キリスト教婦人矯風会Wikipediaに記述されていたこの歴史的事実に関する箇所が何者かによって全て削除された模様。http://goo.gl/c84rNw